活動記録
2025年3月9日(日) 庭代台のアマナ(ミニ観察会)
今回は、初めての試みとして、アマナの観察を主な目的として半日だけのミニ観察会を実施した。ただ、今年は冬から寒さが厳しくアマナの花の開花が見られるか心配な中で開催した。泉北高速鉄道栂美木多駅を9時35分出発。栂文化会館前でハンノキの垂れ下がった雄花穂を確認、雄花穂に長い柄があり、柄のないヤシャブシの仲間との区別点と説明があった。イロハモミジの赤い小枝を見ながら進む。陸橋の上から道路に植えられたアメリカフウの小枝を観察、その後道路に出て身近で小枝に翼が付いているのを確認した。同じ仲間のタイワンフウには翼は出ないので、一つの区別点だそうだ。西原公園に入り、ツバキの花を見た。その横に木に隠れるように地元歌人(阪口千寿)のヤブツバキを詠んだ歌碑があり、長年ニュータウンに住んでいてはじめて歌碑を見たので驚いた。公園には開発前の丘陵が残っており、その林には、センリョウ、ナンテン、シュロなどが生えており園芸種の種が鳥などにより運ばれて入っているとのことでした。この場所で、オオシマザクラとソメイヨシノの冬芽を観察した。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種といわれており、冬芽をみると、ソメイヨシノにはわずかな毛が有り、オオシマザクラに毛が見られない。エドヒガンには毛が多く、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの中間の形質を持っているとのことでした。
少し下ってアマナの群生地を確認、緑の葉が一面に拡がっている。その中心には、サクラと思われる切り株があり、約50年ほど前に苗木として運ばれ、その木の根元の土に付いてきて、周りに拡がったのだろうと説明。木村副会長が以前に採取したアマナの種子を見せてもらった。種子にはエライオソームと呼ばれるアリが好む成分があり、アリが種子を巣穴に運び、好きなところだけを食べて、残った種は巣穴から運び出すので、種子が散布されるとの説明があった。まだ、花は咲いていなかった。
道路に出て高架下へと進む。フェンスに伸びたクズの冬芽、溝から伸びたヤエムグラ、花が残っているアラゲハンゴンソウ、咲きだしたカンサイタンポポの花、ツクシ、スズメノヤリの葉などを見て原山公園に入り、長池の周りの雑木林に接した遊歩道を進んだ。コウヤボウキの種、コバノミツバツツジ、モチツツジ、ネジキなどを観察し、新しく出来たプールの施設では最近よく植えられているシマトネリコとオカメナンテンの植栽をみて、庭代公園への遊歩道を進んだ。ハマヒサカキの生け垣、ミチタネツケバナ、キクザキリュウキンカ、ボケなどの花を見ながら、庭代公園のアマナの群生地に到着。果たして花が咲いているか? 皆で懸命に探した。少し離れたところから、花が見つかったとの声、花が二輪咲いていた。今井から、アマナの生活史の説明があり、この場所で12時過ぎに解散。これまでに開催したことがない季節でのミニ観察会、新鮮で良かったと思う。
2025年2月23日「河内長野市高向・花の文化園」観察会
「府立花の文化園」は1990年9月に開園した植物園です。今回は少し先のバス停「汐滝橋」から、まず春を待つ山里の道端植物を観察しながら園に向かいました。ロゼット状のオオアレチノギクもある中、早くもヒメオドリコソウやオオイヌノフグリがわずかに花を咲かせていました。冬でも青々としたシダやコケを観察する方々もありました。
「花の文化園」ではガイドの方に案内をお願いしました。今年の冬は寒さが長引き梅はちらほらしか咲いていません。それを補うようにロウバイ園ではまだ見頃の花がよい香りを漂わせていました。この日は寒いながらよく晴れていたので、フクジュソウがパラボラアンテナのように大きく開いていました。その他、早春の花バイカオウレン、セリバオウレン、セツブンソウの可憐な花を楽しみました。またこの地域特有のイズミカンアオイの花もありました。これからユキワリイチゲやミスミソウが咲き出すそうです。樹木ではマンサクが独特の黄色い花をつけていました。ふと目の高さに、通常は樹上高くにあるヤドリギが見えます。これは見やすいように着生させたそうで、丸い黄緑色の実がよくわかりました。その他、オーストラリア原産のバンクシアの仲間やギョリュウバイの花など、外国産の樹木もあります。四季を通じて楽しめるようボランティアの皆さんが手入れしておられるそうです。
その後は自由行動とし、温室を見学したり、再度観察に行ったりして終了しました。
下は当日観察したバイカオウレンとセツブンソウです。
第48回会員発表会
◎ 日時 2025(令和7)年1月12日(日) 午後1時30分~4時30分
◎ 場所 堺市立南図書館(TEL 072-294-0123)3階 集会室2
※交通:泉北高速鉄道「泉ヶ丘」駅下車南西約300m、泉ケ丘市民センター内
• 発表者及び演題
・今井 周治 「岩手県の早池峰山などで見た高山植物」
・酒井 和子 「堺・鉢ヶ峯 里山の花めぐりー2024」
・左木山祝一 「コケ植物の歩んできた道筋」
< 休 憩 >
・ 芦田 喜治 コケ2024
・左木山 祝一 「鶴見緑地植物観察会(2024年観察会より)」
午後1時30分,木村副会長から昨年の活動や今年の行事の紹介,会誌の表紙を飾ったスズサイコの解説などを加えたあいさつで,年初めの会員発表会が始まりました。
1番目は,今井周治さんの「岩手県の早池峰山などで見た高山植物」の発表です。東北各地を訪れたときの旅や登山の様子とそこで見た植物を,早池峰山の高山植物を中心に美しい写真で紹介していただきました。
2番目は,酒井和子さんの「堺・鉢ヶ峯 里山の花めぐり-2024」です。1年を通して鉢ヶ峯に通い続けて得た貴重な情報や美しい植物の写真を,軽妙な「酒井節」にのせて紹介していただきました。これは個人的な感想ですが,この貴重な情報をぜひ,会誌にも投稿して残していただきたいと思いました。
3番目は,左木山祝一さんの「コケ植物の歩んできた道筋」です。コケ植物が歩んできた道筋を,最新の情報を駆使しながら,まるで高校の授業のような理論的な説明をしていただきました。
休憩をはさんで4番目は,芦田の「コケ2024」の発表です。2024年に出会ったコケの紹介と,会誌に投稿した内容について解説しました。
5番目は,再び左木山祝一さんの登場で「鶴見緑地公園観察会報告(2024年観察会より)」です。観察会の会場になった鶴見緑地公園の歴史に始まって,講義調の格調高い観察会の報告をしていただきました。
そして,会場の借りられる時間が迫る中,出原副会長の閉会の一声で,会員発表会も無事に終了しました。最後に,発表会全般の調整をしていただいた木村副会長,むずかしい司会役と,会を円滑に進めるための時計係もしていただいた出原副会長,受付役の会計担当の藤村さん,すばらしい発表をされた発表者の皆さま,そして,その発表を熱心に聴いていただいた発表会に参加された皆さまに感謝いたします。
2024年11月10日(日) 高安山~竜田川方面植物観察会
当日は、お天気に恵まれ、暑くもなく、寒くもなく、植物観察には、とても良い天候であった。近鉄西信貴ケーブルで高安山駅まで上った。上って行く途中では、眼下に大阪平野が一望でき、すばらしい眺めが楽しめた。高安山駅前に9:40に集合して、挨拶をして、資料を配布した。今回の主な目的は、アオモジとシマカンギクとの出会いであった。10時に出発して、観察会を始めた。
歩き始めてすぐには、クマノミズキ、ヤマコウバシ、クヌギ、コナラ、ニワトコ、シロダモ、ソヨゴ、ウラジロノキ、コバノガマズミなどが観察された。キク科のコウヤボウキは、ちらほらと花が残っていた。しばらく歩き続けると、目的のアオモジに出会った。この時期のアオモジを見るのは初めてであったが、たくさんの花芽がびっしりと付いていて、びっくりした。「年末~2月には、アオモジが花屋で咲き誇っている」という話に納得がいった。もう準備が始まっていたのだ。
高安山レーダー付近では、花の咲いているテイショウソウが観察された。テイショウソウの花は、コウヤボウキの花と似ている。私の経験では、テイショウソウは、和泉山脈と生駒山地では見受けられるが、北摂の山々では生育していないように思われる。テイショウソウ以外には、ミツバ、ノササゲ、アオミズ、ヤブマオ、ヤブマメ、ボタンヅル、ヤブタバコなどが観察された。シソ科の小さな花が見受けられたので、近寄って見ると、ナギナタコウジュであった。片側に花を並べている花序のようすは、薙刀を想像させる。匂いを嗅いでみると、あの独特の香りがした。
大阪府と奈良県の境の尾根道を歩いていると、ヤクシソウの花が盛況に咲いていた。ヤクシソウの名の由来は、茎を抱く倒卵形の葉の形が、薬師如来の光背に似ているからと言う説があるが、その変わった形の葉に黄色の花がたくさん咲いている様子は、風情のあるものであった。
立石越で急カーブをして、奈良県へと足を運んだ。ここから龍田川駅までは、下り一辺倒である。しばらく歩いた後、12時が近づいてきたので、菊畑の横の道端で、昼食を取った。日向で昼食を取るには暑く、日陰で昼食を取るには寒い、と言う複雑な陽気であった。私は、その境目で昼食を取ることにした。近くの藪には、赤いカラスウリの実が、いくつかぶら下がっていた。
しばらく歩くと、久安寺の集落に到着した。ここでも、集落周辺でアオモジが植栽されていて、花芽をたくさん付けていた。久安寺集落~信貴畑集落では、ツクバネガシ、テイカカズラ、アキノキリンソウ、ボントクタデ、ミゾソバ、テイショウソウ、カゴノキ、マルバアオダモ、アカガシなどが観察された。垂直分布に関して、アカガシは照葉樹林帯の最高部に生育する。この地域は内陸部であり、冬の寒さがかなり厳しいのであろう。
信貴畑集落を集発して、椹原(ふしはら)の集落に向かった。途中には、ナツフジ、ミヤマガマズミ、コバノガマズミ、スダジイ、ネズミモチの他、待望のシマカンギクが観察された。シマカンギクの鮮やかな黄色の花が、日当たりの良い斜面に、あちらこちらと咲いていた。長尾さんが、スマホを使って、インターネット検索すると、「シマカンギク」と検索された。今風に言うと、シマカンギクは、私の「推しの花」で、眺めていると心が華やぎました。ミヤマガマズミとコバノガマズミがいっしょに観察されたので、葉の手触りを試してみました。ミヤマガマズミがツルツルとした手触りに対して、コバノカマズミは毛ば立つような手触りがした。
椹原集落にある正光寺でトイレをお借りして休憩した。椹原集落を出発して、竜田川駅に3時過ぎに到着し、観察会終了の挨拶をして、解散した。
2024年10月20日 鶴見緑地公園観察会
このところ雨で中止となる観察会が多かったが、この日は晴天に恵まれ、爽やかな風の中、気持ちのいい観察会となった。 大阪メトロ鶴見緑地駅に午前10時に集合し、木村副会長の挨拶の後、観察を開始する。
まず、中央大通にあるメタセコイアとラクウショウで両者を比較する。樹形を比較した後、どれが1枚の葉か、その根拠は、などのクイズで長枝と短枝を理解し、葉が対生のメタセコイアは球果の鱗片も対生、葉が互生のラクウショウは球果の鱗片も互生であることを確認した。
「自然体験観察園」に入ってすぐの所にヤブガラシがあったので、このツルは茎が変化したものか、葉が変化したものかを、葉が互生か対生かに注目して考えた。
さまざまな植物を観察しながら進む。ここで育っている木には、植栽されたものと、鳥が運んできた種子に由来するものとが混じっているようだ。ジュズダマ、カラムシ、ミゾソバなどを観察しながら進む。コウホネが咲いていた。田にはデンジソウが見られた。よく育ったマコモがあった。この芽が黒穂菌に感染して大きくなったものはマコモダケの名で店先にも並ぶようになってきている。外来植物のマルバツユクサも見られた。
古代米が育てられていた。見るとふつうのイネには無いノギが発達していた。多くのイネ科に見られるノギは、食害から種子を保護し、種子散布にも役立つと考えられているが、イネでは収穫時の妨げになるとして、栽培化の過程で選抜、除去されている。
「風車の丘」ではコキア(ホウキギ)やミューレンベルギアが美しかった。ギンドロ(ウラジロハコヤナギ)が地下茎で増えていた。風車をバックに記念写真を撮った。
ホシアサガオとマメアサガオの比較などを行いながら、「日本庭園」へ。背後に作られた流水中にはアメリカオオアカウキクサと思われるシダ植物があった。
ここから少し北に進んだ「西アジアレストハウス」近くの休憩所で昼食を取った。昼食中、ハシブトガラスが早く出ていけ!とばかりに鳴き続けていた。
昼食後、ナギやナンジャモンジャノキなどを観察しながら山のエリアを下る。途中、イヌビワがあったので、この雌株・雄株とイヌビワコバチとの関係を説明した。また、アメリカデイゴが咲いていたので、花の色、ガクの丈夫さ、密の多さなどから鳥媒花と考えられることを説明した。
山のエリアの「西ゲート」から「せせらぎの滝」へ。ここではカツラの短枝と長枝について説明した。「緑のせせらぎ」に沿ってアベマキ、ハンゲショウなどを観察しながら歩く。コケ植物では、ヒナノハイゴケ、サヤゴケ、ヒロハツヤゴケ、ケカガミゴケ、フルノコゴケなどを観察した。
「けやき通」を通り、「咲くやこの花館」前へ。当初は全員で入館の予定であったが、温室の工事中であることや通路が狭く全員集まっての植物観察が困難であることなどから、いったんここで解散し、希望者のみで入館することにした。
「咲くやこの花館」では、石垣島や沖縄などで見られるサガリバナやマングローブで見られるオヒルギ、アリと共生する植物、トックリキワタの花と実、多くの高山植物などを楽しんだ。咲くやこの花館は広いバックヤードで開花調節し、頻繁に植物を入れ替えているので、高山植物なども季節に関係なく楽しめる。 (左木山 記)
【その他の観察した植物】
アキニレ、ユズリハ、ヒメコウゾ、センダン、コナギ、ナツメ、エノキ、ケヤキ、コブシ、アメリカフウ、イロハモミジ、アメリカノウゼンカズラ、オオオナモミ、アカギ、スイフヨウ、ヒトツバタゴ、トウネズミモチ、クヌギ、クマシデ、アカシデ、ニシキギ など
2024年9月22日に実施予定の泉佐野丘陵緑地観察会は雨天のため中止になりました。
2024年6月9日に実施予定のせんなん里海公園観察会は雨天のため中止になりました。
2024年5月12日 甘樫丘(国営飛鳥歴史公園)観察会
甘樫丘には「万葉の植物園路」と名付けられた散歩観察コースがあります。万葉の木々が40種選ばれ、①~㊵と順に番号が振られ、和歌を紹介してあります。植物同好会の私たちとしては和歌のヒントなしで同定していきたいところです。和歌の文字もいわゆる万葉仮名で、イチイガシ(伊知比)、ヤマブキ(山振)、シャシャンボ(佐斯夫)、ミツマタ(三枝)、クチナシ(支子)などすぐにはわからないものもありました。
さて、下見を5/6(土)に行ったときは①番から㊵番まで順調に見てまわれたのですが、そこで思いがけない予告を知ります。観察会の当日は①番から⑳番までのコースが通行止めになるのです。いまさら、会員に連絡もできないので半分のコースだけで辛抱していただくしかなくなりました。下見で「尾根コース」を歩くと、キンランとギンランに会えましたし、名札がつけられた秋に咲く野草を勉強することもできたのですが、本当に残念でした。
スタート場所で木村さんにタンポポの解説をしていただきました。アカミタンポポ、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポ、それにカンサイタンポポ。それからオオニワゼキショウ、アイセイタカハハコグサといった外来種を見て、園路コースを㊵番から逆にゆっくりと進みました。独特な色のナワシロイチゴ(実)、高校生物で習う桑実胚の由来になったマグワ(実)、濡らすと動くカラスムギ(種子)などを観察しました。花を見られたのはガマズミ、カナメモチ、タニウツギ、スイカズラ、エゴノキ、ニシキウツギ、モチツツジ、クサノオウ、サクラマンテマ、アオオニタビラコ、コモチマンネングサなどです。
ヤマコウバシの葉が一部コクサギ型葉序であること、ウラシマソウが芋の育ち具合で雌雄が決まることなど学びました。公園内は草刈りがなされていましたが、ウバユリやツリガネニンジンなどは意識的に残しているように思えました。花がないものも少しあげておきますと、ヤマムグラ,アゼナルコ、ウワミズザクラ、イタチハギ、エゾノギシギシ、ナナミノキなどがありました。シダではミゾシダ、オクマワラビ、シケシダなどが見られました。
前日の午前まで雨で中止も予想された観察会でしたが、当日の朝の降水確率が午前・午後ともに50%で実施に到りました。結局、午後2時半までの観察は傘をささずに済み、終わってみれば涼しくて良かったと言える観察会でした。(長尾 記)
2024年4月21日 石清水八幡~淀川背割提観察会
雨模様であったが、大阪府の朝の降水確率が50%であったため、開催することとなった。
京阪石清水八幡駅を傘がなくても良い程度の小雨の中、10時に出発。駅前で、葉に深い切れ込みあり、痩果が赤いアカミタンポポを確認した。そのあと、石清水八幡の一の鳥居をくぐり、池に貴重種のアサザが植えられているとのことで観察した。池の右隅には、藤棚があり、ちょうど咲き始めたところであった。池の大部分はハスに覆われているが、藤棚の下にアサザらしい葉があるが、場所をかえるとすぐ近くに、葉にぎざぎざのあるアサザを確認した。昨年5月1日の下見時には花も確認できたが、今回は少し早いため見られなかったのが残念であった。そのあと、神応寺の方面に行く、水路沿いに、イチハツやヒメウツギ、アマドコロなどの花が見られた。クサノオウやヤエヤマブキを見て、参道に入ると、シャガの花が咲いており、さらに上ると斜面一面を覆い尽くしているところもあり壮観であった。参道では、ヤマアイ、ヤブニンジン、タニギキョウ、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、キランソウ、ムラサキケマンなどの花が見られた。参道の谷をへだてた向いの斜面には、クルマシダが一面に拡がっているところがあるが、行場では、間近に葉を見ることができた。さらに進み、アオオニタビラコ、ヌカボシソウ、ベニシダとフモトシダの芽生えの姿、コンテリクラマゴケなどを見て、本堂に到着。色々な花木が植えられているが、ヒラドツツジではないかと思われるもので、萼の根元まで花弁が5つに分裂しているものがあり、みんなで感心して見ていた。階段を下り、石清水八幡の一の鳥居をあとにして、元来た道を引き返し、大谷川に降り、岸に生える植物を観察した。そこでは、キツネノボタン、ヤガミスゲ、オオカワヂシャ、セリ、イヌガラシなどの他にイグサ科の帰化植物のコゴメイがあり、茎を縦に裂くと、髄に空洞が有り、イ(イグサ)との区別点を確認した。
京阪電車の鉄橋の下をくぐり、京阪国道沿いを背割堤方面に進む。11時50分頃、「さくら出会い館」に到着、集会室で昼食をとった。部屋には桂川、淀川、木津川の改修の歴史が分かるパネル展示があり、宇治川は巨椋池を経由して淀川に流れていたのを改修し、水草で有名だった巨椋池は干拓し今は耕作地になっていることや、背割堤は宇治川の洪水対策として、明治時代の改修でも設けられたことなどが理解できた。昼食後、12時30分ころから、雨脚が少し強くなったなか、背割堤を下流方面に向けて出発。堤の上から、木津川河川敷に黄色いカラシナが一面咲いているのが見られた。木津川の河川敷に降り、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ、ブタナ、ノアザミ、ナヨクサフジ、トゲミキツネノボタン、セイタカヨシ、ナガバギシギシ、スイバ、クコ、イタドリなどを観察して、背割堤を超えて淀川の河川敷をさかのぼる。淀川の河川敷は木津川に比べ幅が狭く、木々がたくさん育っており、それらの樹木の下に育つセイヨウイラクサ、ヤワラスゲ、オドリコソウの花などを観察して、雨脚が強くなったこともあり、石清水八幡駅にもどり、13時50分頃解散した。雨の中であったが、普段見られない植物が多く見られた観察会であった。 (今井周治 記)
令和6年1月14日(日) 第47回会員発表会
標記の発表会が堺市立南図書館で開催されました。
・笹井 宏悦:ハマデラソウの育成状況について
・酒井 和子:堺・鉢ヶ峯「里山の大切な仲間たち―2023」
・植村 修司:堺市の生物多様性保全上考慮すべき野生生物
―堺市レッドリスト2021・堺市外来種アラートリスト2021について―
< 休 憩 >
・芦田 喜治:コケ2023 見たこと,したこと
・出原 茂樹:2023年観察会より:能勢町地黄湿地
午後1時30分,木村副会長のあいさつとたくさんの資料を使った昨年の活動などのふりかえりで,年初めの会員発表会が始まりました。
1番目は,笹井宏悦さんの「ハマデラソウの生育状況について」の発表です。牧野富太郎が名付けた堺の地名がついた唯一の植物であるハマデラソウの保存に向けての関連小中学校や保存会の取り組みや,堺市内や周辺地域での生育状況について報告していただきました。
2番目は,酒井和子さんの『堺・鉢ヶ峯「里山の大切な仲間たち-2023」』です。毎年の発表会で聞くことができる軽妙な「酒井節」に今年ものせて,2023年に鉢ヶ峯で見ることができた植物を美しい写真とともに紹介していただき,その生育状況の変化についても話していただきました。
3番目は,植村修二さんの「堺市の生物多様性保全上考慮すべき野生生物-堺市レッドリスト2021・堺市外来種アラートリスト2021について-」です。堺市のレッドリストやアラートリストの設定される仕組みをやさしく解説していただくとともに,リスト作成以上に「みどりの保全」が大切なことを,長年の植物観察に基づいてわかりやすく説明していただきました。
休憩をはさんで4番目は,芦田の「コケ2023,見たこと・したこと」の発表です。2023年に出会ったコケの紹介と,会誌に投稿した内容について解説しました。
5番目は出原茂樹さんの「2023年観察会より:能勢町地黄湿地観察会の報告」です。かつて能勢町の観察会で訪れた地黄湿地を,今回は中心にした観察会の報告です。何度も現地を訪れて得た湿地特有の生物を,今の同好会の会員の皆様に合った観察コースの設定や観察会当日の様子などに交えて報告していただきました。
そして,奥田副会長の閉会のあいさつで,会員発表会も無事に終了しました。
今年は長く続いたコロナの不安は静まったのですが,年明け早々の能登半島地震のせいで,会場までの足取りも心なしか重く感じました。しかし,昨年よりもたくさんの会員が参加された会場の熱気と,箸休め的な私の発表を除けば,どの発表も膨大な情報を短い時間に濃縮したすばらしい内容で,本当に充実した発表会になり,足取り軽く帰宅することができました。
最後に,発表会全般の調整をしていただいた木村副会長,むずかしい司会役をみごとにされた奥田副会長,発表に加えて会を円滑に進めるための時計係もしていただいた出原副会長,受付役の今井副会長と会計担当の藤村さん,すばらしい発表をされた発表者の皆さま,そして,その発表を熱心に聴いていただいた発表会に参加された皆さまに感謝いたします。
(芦田 喜治)
令和5年11月5日(日) 近つ飛鳥風土記の丘周辺観察会
当初は雨の予報だったが、好天となり最高気温が28℃に達するなど11月としては暑い一日だった。集合場所の富田林駅には11人が集まり、来月20日に廃止となる金剛バスで河南町の平石バス停まで行った。このあたりは田畑が広がる農村地帯で古くからの里山の風景が見られる。ここからススキの穂が白く光る穏やか登り道で、約1km先の高貴寺をめざす。途中、アキノノゲシ・アキノタムラソウ・ヤマハッカなどの花とともに、やや時期はずれのクサノオウやホトケノザ・オニノゲシ・ウシハコベの花も見られた。カナムグラの雌株は結実し、枯れた花序をつけた雄株と対照的。いずれも地下に閉鎖花をつけるミゾソバとヤブマメも花盛りであった。橙色のカラスウリや赤いサネカズラ・黒紫色のアオノツヅラフジなどのつる植物の実が目を楽しませてくれる。次第に山に近づき、小川のそばにはセキショウやボントクタデ・ヨシノアザミ・シャガなどが生え、シダ植物の種類もイヌワラビ・ワラビ・ホシダなどの人里の種から、ホソバカナワラビやリョウメンシダなどに移り変わっていく。
高貴寺まで緩い坂を上って行くと赤い実を次々と目にする。民家の庭にあったピラカンサとウメモドキ、それ以外にもソヨゴ・ウラジロノキ・コマユミ・クロガネモチ・ナナミノキ・アオハダ等、様々な大きさや色合い・質感の異なる赤い実を見た。高貴寺の山門のそばにはフユノハナワラビの群生が見られた。寺を出たところに、下見の時にはつぼみだったシマカンギク(アブラギク)の黄色い花が咲いている。次にヒノキの植林を経て着いた磐船大神社付近には、コジイの大木がたくさんあり、ちょうど実が落ちており、拾っている方も多かった。神社境内のサカキには黒い実ができていた。ここで昼食をとり、午後1時に神社を出発したが、最初は思いのほか長い急坂が続く。コジイ林が切れたあたりから、数本の大きなアカマツが見られ、低木のコバノミツバツツジ・ネジキ・ヤマウルシ・カマツカ・モチツツジなどアカマツ林に多い種が出現し、大部分のアカマツは枯れてしまっているが、以前はアカマツ林が広がっていたことがわかる。
坂を下りきって道路に出て、少し急な坂道を竹林の中を登って行くと、平石城跡に行く分岐点につく。少し寄り道をするが、あまり展望は良くない。説明によると「赤阪城の支城の1つで、この地の豪族平岩茂直が元弘元年(1331年)に立てこもり、その後正平14年(1359年)楠木正儀がこの城を固め足利勢と戦った」とあった。その後、今日の目的地の近つ飛鳥風土記の丘に向かう。途中、右側はゴルフ場で左も谷になった尾根道を歩く。左側の低木が途切れたあたりで大和葛城山を正面に眺めることができた。この道にはコナラが多く、ちょうど熟したアケビの実がたくさんぶら下がっていたが、もうちょっとのところなのに手が届かなかった。
このあとはずっと平坦かゆるい下り道で快適だった。左側の谷には今はタケやヨシ・クズなどで覆われて荒れているが、平らな土地やため池などがあり、昔は水田があり高齢化で放棄されたと思われる。降りて調べてみると貴重な植物が見つかるかもしれない。このあたりで取ったウラジロでグライダーを作って遊んだ。ウラジロの先端の二股部分(一対の羽片)をくっつけたまま切り取り、紙ヒコーキよろしく投げると、下り道の方に向け投げるとうまく滑空する。ほどなく、近つ飛鳥風土記の丘に到着し、足元にこれまで多かったウラジロノキとは異なる赤い実があり、上を見るとアオハダだった。樹皮をこすり取ると緑色なのと短枝があるのが特徴。その後、古墳群の間を歩き、赤い実をつけたタラノキを見ながらバス停まで下り解散し、富田林行と喜志行の金剛バスに分かれて乗車した。
令和5年10月8日(日) 京都府立植物園観察会
この日は天気が思わしくなく、指定の午前7時現在の京都の降水確率が午前30%・午後80%で、案内では午前・午後の区別をせずに、50%以上の時は中止としていたので、判断に戸惑われた方もおられ、お問い合わせもいただき、担当者で相談の結果、午前が30%なので実施することにしました。参加予定で中止と思われた方には申し訳ありませんでした。これを教訓に降水確率の表示方法は改善したいと思います。
10時30分の集合時刻に植物園の北山門に集合されたのは6人で、全員無料で入園して観察を始めました。満開のコスモスの花に迎えられ、正面に樹高10数mに達するトウカエデをみて、「竹笹園」にあるスエコザサを観察。牧野博士が妻の寿衛さんに捧げたことで有名。先週終わった「らんまん」の最終週のテーマでもありました。現在ではアズマザサの変種とされ、葉の片方(多くは上側)が内側に巻き込み、表面に長毛があるという特徴を観察できた。参加者に須恵子さんがおられたのも奇遇であった。
次に「植物生態園」に入り、様々な季節の植物を観察した。最初に左木山さんから、珍しいイセノテングゴケが紹介された。この植物園ではコケにまで名札がついている。生態園には多くの種類の植物があり、書くときりがないが、秋の七草の花をすべて見ることができ、今年はやや開花が遅かったヒガンバナが園内ではまだきれいに咲いていた。他に、冬になると枯れた茎に根から水が運ばれて霜柱ができるシモバシラの白い花が最盛期で、コミカンソウそっくりの実をつけるカンコノキ(コミカンソウ科)や、分布が局限されているがここでは大繁殖しているスズムシバナ(キツネノマゴ科)、大隅半島特産で大きな黄花を咲かせるタカクマホトトギスなどの花が印象に残っている。
みんなで熱心に観察して、ああでもないこうでもないと話しながら歩いていたら、お昼前になっていた。水琴窟の音を楽しんだり、池や小川があり、多くの樹木が植えられている「なからぎの森」で左木山さんにウマスギゴケ・エダツヤゴケ・オオミハタケゴケ・ホソオカムラゴケなど教えていただきながら「絶滅危惧種園」をめざす。ここでは、アマミアセビが生息域外保全されている。他にヨツバハギやハマアザミ・クサボタン・フジバカマなどの花が咲いており、水甕には牧野氏が発見したムジナモがあり、捕虫葉が観察できた。この近くの「中国植物園」で、ヒメサンショウバラのトゲトゲの実や常緑のカエデ類などを見てから、近くの東屋で昼食を食べることにした。食事が終わった午後1時頃から小雨模様となったが、午後は観覧温室内での観察を中心に行い、濡れることはなかった。
この日は園内の桜が何本か返り咲きしており、温室前の2本の大きなヤマザクラは3分咲きくらいであった。夏の高温少雨で葉がほとんど落葉したので、開花したものであろう。日本最大級で4500種を展示している観覧温室では、最初に開花中のオヒルギの花を観察し、仏教の三大霊樹とよばれるムユウジュ(釈迦の誕生)・インドボダイジュ(悟りを開く)・サラソウジュ(釈迦の入滅)を見た。サガリバナの花・カカオの花と実・バオバブの実・様々な形態のビカクシダやアナナス類、多種多様なラン科植物などが印象的であった。日本ではなじみのない植物でも、よく見ると興味深く、例えば、カタバミ科で樹木になるゴレンシ(実はスターフルーツ)の花は5弁でカタバミそっくりだった。3時頃温室を出て、小雨の中を集合場所の北山門まで戻り、解散した。今回は植物園内で気軽に、少人数で充実した観察会ができた。
京都府立植物園で見た植物のいくつかを【こちら】に載せました。
令和5年9月24日(日) 能勢町地黄湿地観察会
日ごろ見ることができない湿地の植物をじっくり楽しめる観察会になりました。
9時20分、能勢電鉄妙見口駅前集合で挨拶と初めのレクチャーを始めました。出原さんから地図と植物リストの資料で今日のコースの説明を聞き、さらに、今日の目的の1つとしてヒメシダ科3種類の見分け方を教わりました。ハシゴシダ、ヤワラシダ、ハリガネワラビを見分けられるよう観察をしました。 9時45分に2台のタクシーで地黄郵便局前まで行き、観察を始めました。
地黄湿地までは田んぼの横や林の中の道を進みました。そこでは、マルバアオダモやヤマハゼ、サンショウ、ウリカエデ、クロモジといった里山の樹木がみられました。ボントクタデとイヌタデ、イヌコウジュとヒメジソといったよく似た植物の比較などもできました。そのうち、シダがたくさん見られるようになり目的のシダの同定をはじめました。初めに出てきたのはヤワラシダです。軸の色とソーラスの位置で見分けることができました。林の中に入り、地黄湿地に近づくとハリガネワラビが多くなりました。残念ながらハシゴシダを見つけることはできませんでした。樹木ではオオバヤシャブシとヒメヤシャブシがあり、その見分けもすることができました。
地黄湿地は許可なく立ち入ることができません。そこで、能勢町で里山の保全活動をされている湯浅さんに湿地の立ち入りと案内をお願いしていました。12時5分に地黄湿地についたとき、湯浅さんが柵の鍵を開け準備してくださっていました。そこで、昼食にして12時30分から約2時間、湿地の観察をしました。湿地は上池と下池に分かれています。まず上池の周りのセンブリを見に行きました。以前は沢山あったそうですが、林の木を伐採したためにずいぶん減ったとのことでした。その後、シロイヌノヒゲ、イヌノハナヒゲ、スイラン、キセルアザミ、シカクイなど様々な湿地植物を見ることができました。水の中にはタヌキモがありました。次に、下池へ行くと、背の高い草の中に混じってムカゴニンジンを見つけることもできました。湿地を進んでいくと、アケボノソウが一輪だけ咲いていました。聞けば昨日は咲いていなかったそうで、私たちのために今日咲いてくれたように思いました。このように町中や野原では見られない植物がまだまだ沢山ありました。しかし、この里山や湿地には野生のシカがいて、植物を食べるために困っているとのこと。そういえば湿地に来る途中にもシカよけの電気柵がほとんどの田や畑にありました。能勢は栗の産地ですがシカはとても困った動物というわけです。湿地でもキセルアザミをはじめ多くの植物がシカに食べられていました。そこで、防鹿ネットで保護区画を作り、その効果や植生の違いを調べているそうです。下池を出て、14時20分ごろに湿地を後にしました。
そこからは1時間ほど歩いて途中の休憩地点である興徳寺まで行きました。途中の道は舗装されているところが多かったですが、日本の原風景のような景色を楽しみながら進みました。興徳寺からも1時間ほど歩き、16時10分ぐらいに野間の大ケヤキにつきました。大ケヤキにはフクロウやアオバズクが来たことがあるとのことでした。16時15分タクシーで妙見口駅までもどり、出原さんから本日のまとめをして頂き解散しました。観察会とは違いますが、妙見口からのバスが平日も無くなり、ケーブルカー・リフトも無くなるそうで、寂しく思いました。
地黄湿地で見た植物(一部)を【こちら】に載せました。